一般的な状況
介護保険制度のサービスはがんに罹患した方の自宅療養において、とても役立つサービスです。対象となる方は、①40歳以上で介護保険料を納めている方、②がん末期という意見書を医師に記載してもらえる方です。※65歳以上で既に介護保険を利用されている方はそのまま利用できます。
よくある困りごと
がんによる病状の進行によって体力が低下した場合に介護保険サービスが利用できるということはあまり知られていません。特に40~64歳(2号保険者)の方々にとっては、それまで「介護」という言葉とは無縁だった方も多いと思います。しかし、次のような状況では1割の経済的負担でサービスを利用することができます。
- 布団からの立ち上がりが大変な方 → 手すり付きの電動ベッド
- 痩せてしまい寝ているときに腰やおしりの骨が痛い方 → 床ずれ防止マットレスのレンタル
- 骨転移などで歩行が難しい方 → 車いすのレンタル
- 化学療法の後遺症で足のしびれが強く転倒しやすい方 → 杖のレンタル・手すりの内装工事
- 1人暮らしなどで一人での家事が困難な方 → 生活援助:掃除、洗濯、買い物など
- ふらつきがあり一人での入浴に不安がある方 → 身体介護:入浴介助
末期がんと診断された方の多くが、それ以前と変わらず自分で自分のことができる状況です。しかし、体力を失いはじめてからはできなくなることが1~2週間の間で急激に増え、そのタイミングで介護保険サービスを慌てて導入される方が少なくありません。間に合わない場合もあります。
また、「いざとなったら入院すれば良い」と考えている方でも、緊急性がないと病院で判断された場合は自宅での生活を余儀なくされる場合も少なくありません。
考え方のポイント
このような場面で慌てないためにも、できるだけ早めに介護保険サービスの手続きを確認しておきましょう。
制度はやや複雑なので窓口で確認するのがおすすめです。窓口は、①お住まいの地域の地域包括支援センター、②市区町村の介護保険窓口、③入院中の方は病院内のがん相談支援センターあるいは、地域連携室です。1人暮らしの方の場合は、ケアマネジャーと呼ばれる担当者が申請を代行することも可能です。
手続きは、一般的に書類の申請から調査を経て約1ヵ月後に審査結果が出ます。要介護1~5・要支援1・2など介護度に応じて、サービスを利用することができます。状況によっては調査後からサービスを利用することができる場合もありますが、いずれにしてもケアマネジャーという担当者と相談して決めていくことになります。
介護保険サービスの利用によってケアマネジャーや訪問看護師など自宅療養での良き相談相手を得ることでご家族の支えとなる場合も少なくありません。
若いがん罹患者にとっては診断名の「末期がん」や「介護保険」という言葉に抵抗がある方も少なくありませんが、療養環境をきちんと整えることはご本人の精神的にも体力的にも大きな支えとなります。利用できる制度を活用しながら穏やかな自宅での生活が維持できますように。
※このページの情報は一般論として記載しています。全ての人に該当しない可能性がありますが、参考情報としていただけましたら幸いです。
(担当: 看護師 賢見卓也)