一人暮らしの方へ

一般的な状況

一人暮らしの人ががんにり患した場合、日常生活にどのような支障が出るでしょうか。

日常生活でも、がんとの関係でも、様々な法律行為(入院契約の締結、医療費の支払、さまざまな公的制度の申請など)が必要になりますが、普段は自分で気にせずこなしておられると思います。

よくある困りごと

法律行為を行うにあたっては、十分な判断能力が必要とされますし(例えば日常の買い物が自分できる程度、と言われます)、法律行為を他の人にお願いする場合には「委任」が必要です(場合によりその証拠として委任状が必要になります)。このため入院中や自宅・施設から外出が困難でこれらの行為を自分で行うことができなくなる場合、誰かに委任することが必要です。

また、判断能力が落ちてしまった場合(極端な例は意識がない場合)には、原則として本人が法律行為ができなくなってしまい、法定代理人として成年後見人の選任が必要となります(未成年の場合は親権者が法定代理人です)。

考え方のポイント

法律行為を誰に頼むか、というのは人それぞれですが、一般には近しい親族(親子兄弟など)に依頼されるケースが多く、社会的にも違和感が小さいようですので、ご家族が第1選択です。また、障害年金の申請などについては、社会保険労務士などの専門職への委任も選択肢です。

公的制度としては、日常生活に必要な活動について、日常生活自立支援事業を利用することがあり得ますが、残念ながらこの制度は申請からサービスの提供までは一定の時間(月単位といわれます)が必要になるようで、がん患者さんにとっては使いにくいかもしれません。

前述の成年後見人の開始・選任手続についても、家庭裁判所の手続が必要で2~3か月程度の期間がかかるのが通常ですので、やはりがん患者さんにとっては使いやすいとは言いづらいところです。また、医療については事前に表明された本人の意思を踏まえて家族と医療者が相談して行うのが通常です。

もしも自分が判断能力がなくなった場合、自分で身の回りのことができない状況については、身近な家族や友人、専門職のサポートも必要になりうることを想定して早めに検討しておかれるとよいと思います。


※このページの情報は一般論として記載しています。全ての人に該当しない可能性がありますが、参考情報としていただけましたら幸いです。
(担当: 弁護士 山崎祥光)